いじめ問題の解決や被害者支援などに取り組むNPO法人や大学教授らでつくるグループが10月8日、文科省で記者会見し、いじめの被害者やその保護者へのアンケート調査結果を踏まえて、いじめの認知・報告の徹底などを盛り込んだ「いじめ防止対策推進法」の改正を求める緊急提言を発表した。主要メンバーのNPO法人「Protect Children~えいえん乃えがお~」の森田志歩さんは「法律ができても、子供がいじめを苦に自ら命を絶つ状況が後を絶たない。学校や教委がきちんと順守することを念頭に置いた法改正を望む」と述べた。
いじめ防止法改正を求める提言をまとめたグループの記者会見
提言を公表したのは、「いじめ当事者・関係者の声に基づく法改正プロジェクト」。いじめの認知件数が2019年度に61万件を超えて過去最多となったのに加え、東京都町田市で女児の自死を巡って遺族との溝が深まるなど、学校・教委の不適切な対応が相次いだのを受け、森田さんの呼び掛けで、(一社)「いじめ構造変革プラットフォーム」や千葉大学教育学部教授の藤川大祐さんら、いじめ問題に取り組む8人でプロジェクトを立ち上げた。
同プロジェクトでは、提言をまとめるにあたって、「いじめの重大事態」に認定された被害者やその保護者を主な対象にしたウェブアンケートを実施し、98件の有効回答を得た。調査結果によると、80%近くが、直面した悩みとして「加害者に対する学校・教委の対応」と「いじめを受けた子供に対する学校・教委の対応」を挙げ、具体的な意見として「いじめの定義が教職員に周知されていない」「ガイドラインがあっても全く実行されない」「重大事態の調査に取り組むと言ったが半年たっても周知されず、少人数でしか取り組まれなかった」など、特に学校や教委に強い不信感を示す内容が目立ったという。
この結果を踏まえて、同プロジェクトは提言を取りまとめ、▽いじめ被害者の課題や悩みの解決に有効な相談先、サポート体制を構築する▽教育現場で、いじめ関連法に即した運用が行われる制度とする▽重大事態の調査で、より有効な調査がなされる制度とする▽いじめの認知と報告について、児童生徒の状態を主とした基準とする▽加害者を教室から退去させる措置を、現場の判断で講じられる制度とする――など7項目を掲げ、こうした取り組みを進めるためのいじめ防止対策推進法の改正が必要だと訴えた。
提言のポイントについて藤川教授は「法律があっても、教委が法にのっとった対応をしていないことに問題がある。文科省が強い権限を持って指導できることや、児童が苦痛を感じていたら必ずいじめと認知して24時間以内に報告するなど、認知・報告を徹底することなどを盛り込んだ」と説明した。
森田さんは「子供の命や尊厳を守るために法律がつくられたのに、順守されなければ意味がなくなってしまう。学校や教委の対応によって救えた命は幾つもあったはずで、学校現場が順守することを念頭にした法改正を望みたい」と強調した。
同プロジェクトがまとめた提言は、いじめ防止対策推進法を巡る問題に超党派で勉強会をつくって取り組んでいる国会議員に提出される。